鍼灸治療では西洋医学だけでなく、東洋医学の観点からもしっかりとアプローチして症状の改善を図ります。
今回は東洋医学でみる眼精疲労について説明していきます。
東洋医学では目は五臓六腑の中の「肝」と深い関係があるとされています。
肝は血(けつ)を貯蔵しており、目を栄養する働きがあります。
眼精疲労の原因には、主にこの「肝」が関係し、次の4つが考えられます。
①肝血虚
眼精疲労の原因として「肝血虚(かんけっきょ)」が考えられます。
肝は血を貯蔵させたり、気(エネルギー)を巡らせる働きがあります。
しかし、睡眠不足や目の使い過ぎ、女性でいうと出産や生理などで必要以上に血が消耗され、肝に蓄えられた血が不足すると肝血虚の状態になります。
また、過度なダイエットや心身の疲労でも血が不足します。
このタイプの眼精疲労は、目のかすみやドライアイ、まぶたがピクピクするといった症状があらわれやすいです。
②肝鬱気滞
次に考えられるのが、気の巡りが悪い「肝鬱気滞(かんうつきたい)」です。
ストレスやイライラが続くと、全身に栄養を運ぶ「肝」の機能が低下し、栄養がスムーズに運ばれず眼精疲労が起こります。
イライラすることが多く、緊張状態が続いている人は要注意です。
このタイプの眼精疲労は、精神的なストレスが加わると目の症状が強くなるのが特徴です。
③肝腎陰虚
3つ目が肝血の不足が長期間続き、重症化した状態の「肝腎陰虚(かんじんいんきょ)」です。
肝の血が不足して、更に身体を潤す体液も不足している状態をいいます。
閉経後や中高年に比較的多い症状です。
性病や老化、長引く肝血虚の状態などが原因で起こります。
肝と腎は「肝腎同源」といわれ、密接な関係にあります。
肝は腎に養われていて、肝の機能を回復するためには、腎も強くしなければなりません。
そのため、肝腎陰虚タイプの眼精疲労では、肝と腎の両方の機能を高める必要があります。
白内障などの目の病気にもかかりやすくなるほか、視力の低下などの症状もあらわれるのが特徴です。
また体液が不足して体内の熱が強くなっているので、ほてりや目の充血も起こりやすいです。
④気血両虚
身体に必要な気や血が作られず目を養えないため、眼精疲労になります。
過労や胃腸虚弱、栄養失調、出産などにより気や血が不足すると、目の乾きやかすみ目、視力の低下などが現れます。
このタイプの眼精疲労は、休むと一時的に楽になり、疲れるとまた悪化するという特徴があります。
鍼灸治療
上記の4つのタイプ、またはそれ以外の細かい症状も見極めながら、適切な経穴(ツボ)にアプローチをしていきます。
眼精疲労の症状以外でみられる、肩こり、ほてりやのぼせ、食欲不振、頭痛など、ひとつひとつの症状や状態にも目を向けて、全身の臓腑のバランスの乱れを整えます。
そして臓腑の中でも特に「肝」の機能を高めて、「腎」や「脾」の状態も調整することで根本から改善し、眼精疲労の症状を軽減していきます。
西洋医学と東洋医学、両方からしっかりとアプローチできるのが鍼灸治療の特徴です。